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日英セミナー「ダイバーシティと研究キャリア」

研究にとってダイバーシティとは?優れた研究者のキャリア育成のために、どのような支援が必要なのでしょうか?

UK –Japan seminar on Diversity and Research Careers

2016年2月16日、駐日英国大使館は日英セミナー「ダイバーシティと研究キャリア」を開催しました。英国王立協会副会長のマーティン・ポリアコフ卿、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのウタ・フリス名誉教授が、日本の著名な研究者達とダイバーシティの推進や才能ある研究者の支援について議論しました。ポリアコフ卿とフリス教授は、他の王立協会フェローとともに、Gサイエンス学術会議会合出席のため来日しました。

日本政府は女性研究者の新規採用割合を2020年までに30%にするという目標を掲げています。冒頭でご挨拶いただいた島尻安伊子科学技術政策担当大臣は、科学への女性の参加の重要性をこのように強調されました。

「女性など多様な人材が理工系分野に参入することで、イノベーションが活発になり、社会や経済が発展することを期待しています。」

このテーマについては、今年5月のG7茨城・つくば科学技術大臣会合でも取り上げることが検討されています。

中川健朗内閣府大臣官房審議官(科学技術・イノベーション担当)からは、今年1月に閣議決定された第5期科学技術基本計画に盛り込まれた女性研究者採用の数値目標など、日本政府のイニシアティブについてご講演がありました。

ポリアコフ卿は、王立協会の新たなダイバーシティ戦略を紹介しました。その戦略は、王立協会が独自の権威とリーダーシップを活かして、他団体との協力のもと、英国における科学・技術・工学・数学の分野でのダイバーシティを促進し、よりオープンで参加しやすい科学コミュニティを築くことを目指しています。

王立協会のダイバーシティ委員会の委員長をつとめるウタ・フリス教授は、「高慢と偏見:科学における壁を壊すには」と題した講演の中で、人の決定や判断に影響を与える可能性のある「無意識のバイアス」(unconscious bias)というコンセプトを紹介しました。王立協会では、「無意識のバイアス」に対処することによって、助成金・表彰・任命を決定する際に、幅広く優秀な研究者が対象となるようにしています。フリス教授はこのように述べました。

「王立協会は優秀な科学を代表する団体であり、才能ある研究者を見過ごすことはできません。ダイバーシティは科学の卓越性と進歩のために欠かせないものです。」

パネルディスカッションでは、モデレーターの岡山大学の狩野光伸教授の進行により、王立協会からのスピーカーと京都大学の伊藤公雄教授、科学技術振興機構の渡辺美代子副理事、BTジャパン株式会社の吉田晴乃代表取締役社長がパネリストとしてご参加いただき、活発な議論がおこなわれました。明確な基準によるパフォーマンスとポテンシャル評価の重要性、職業に関する文化的なバイアスについて若い年代からの教育の必要性、研究環境でのメンタリング活用の新しいアプローチ、フレキシブルな働き方を推進するテクノロジーの力、そして、女性(男性)が仕事と家庭を両立しなければいけないという思い込みを捨て、個人に応じたサポートを提供すべき、など、オーディエンスからの質問も交えながら熱心に話し合われました。

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