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COP26議長国としての各テーマ・デーにおける主な成果について

2021年10月31日より11月13日にかけて英国グラスゴーにて開催された第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)は、英国内で開催された史上最大規模の国際会議となり、世界196か国と欧州に加え、先住民族や若い世代、市民団体や企業等から数万人規模の参加がありました。

COP26

気候変動に関する議論は2週間にわたって開催され、会期が1日延長された最終日には気温上昇を1.5℃に抑える目標を維持する「グラスゴー気候合意(仮訳)/Glasgow Climate Pact」に200近い国が採択し、閉幕しました。

「グラスゴー気候合意(仮訳)」は、各国の野心と行動の増加と相まって、1.5℃目標を維持することを意味しますが、世界が協力し早急に努力をしなければ実現できません。各国は、2022年に既存の2030年目標(NDC)を再度見直し、強化することに合意しました。これに加えて、年に一度の政治円卓会議で世界的な進捗報告を検討し、2023年にはリーダーズサミットを開催することも決定しました。

また、6年間の議論を経てパリ協定のルールブックが完成し、UNFCCCを通じて各国が炭素クレジットを取引するための強固な枠組みを定めた第6条を含む各ルールが合意されました。更に、化石燃料の段階的な削減に向けた行動について、初めてCOPで合意・言明されています。

COP26では、4つの目標(緩和、適応、資金、協力)と、英ボリス・ジョンソン首相が発表した4つの主要テーマ(石炭、資金、自動車、植林)においても大きな進展がみられ、各国・団体は、各テーマ・デーに力強いコミットメントを発表しました。

各テーマ・デーにおける成果の一部は以下の通りです。

ファイナンス

英国や日本を含む各国は、途上国が気候変動の影響に対処することを支援するための資金を増やし、COP26に先立って打ち出された、年間1,000億ドルを途上国に提供するという計画を進展させるために新たなコミットメントを発表しました。マーク・カーニーが率いる「グラスゴー・ファイナンシャル・アライアンス・フォー・ネット・ゼロ」を通じて、130兆円を超える民間資金が、科学的根拠に基づくネット・ゼロ・ターゲットと近い将来のマイルストーンの達成に充てられます。

ファイナンス に関する詳細(英語)

エネルギー

クリーンエネルギーへの公正な移行と石炭の迅速な廃止は、 COP26議長国である英国にとって最重要課題でした。エネルギーデーでは、国や銀行・組織が石炭からの脱却を約束するなど、石炭を過去の歴史とするための大きな進展がありました。

  • 少なくとも23カ国が「Global Coal to Clean Power Statement(世界の石炭火力からクリーン電力への移行声明)」において、石炭火力発電の段階的廃止および/または新規の石炭火力発電を行わないことを初めて表明しました。この中には、世界の石炭使用量上位20カ国のうち5カ国(韓国(5位)、インドネシア(7位)、ベトナム(9位)、ポーランド(13位)、ウクライナ(19位))が含まれています。
  • 英国が共同議長を務める Powering Past Coal Alliance (PPCA; 脱石炭同盟)に新たに28のメンバーが加盟し、加盟国・地方自治体・企業・組織の合計が165となりました。
  • 主要な国際銀行は、削減対策がされていない石炭火力発電への新たな国際的な公的融資を2021年末までにすべて終了することを約束しました。
  • 少なくとも34の国と公的金融機関が、2022年末までに海外の削減対策がされていない化石燃料エネルギーへの公的支援を終了することを約束しました。これにより、年間約178億ドルの公的支援の対象が、化石燃料からクリーンエネルギーへと移行することになります。

エネルギーに関する詳細(英語)

自然環境

世界の森林の90%以上を代表するリーダーたちが、2030年までに森林破壊と土地の劣化を止め、回復させることを約束しました。森林の保護と回復のために87.5億ポンド(120億ドル)の公的資金が投入され、53億ポンド(72億ドル)の民間投資も行われます。95社の企業が「ネイチャー・ポジティブ」になることを約束し、2030年までに自然の減少を食い止め、回復させるために努力することに同意しました。

自然環境に関する詳細その1(英語)

自然環境に関する詳細その2(英語)

自然環境に関する詳細その3(英語)

交通運輸

世界リーダーズ・サミットで発表された「グラスゴー・ブレイクスルー」の一つとして、30カ国が協力し2030年またはそれ以前に、すべての地域でゼロエミッション車(ZEV)を入手しやすく手ごろで持続可能なものにすることで、ニューノーマルとすることに合意しました。インド、ルワンダ、ケニアなどを含む多くの新興市場が、自国の市場におけるZEVへの移行を加速することを約束しました。先進国では2035年までに、開発途上国では2040年までに、100%ゼロエミッションの車とバンへの移行を加速することを定めたCOP26ゼロエミッション車移行宣言には、33カ国が署名しました。

また、海事・航空分野の脱炭素化に向けて、グリーンシッピングコリドー(排出量ゼロの海上輸送ルート)の確立を支援する「クライドバンク宣言」や、航空機の排出量を正味ゼロにすることを約束する「国際航空気候野心連合」などが発表されました。

交通運輸(ZEV移行)に関する詳細(英語)

交通運輸(海事分野)に関する詳細(英語)

交通運輸(航空分野)に関する詳細(英語)

ユース

23カ国が、ネット・ゼロ・スクールの設立や、気候を国のカリキュラムの中心に据えることなど、国の気候教育に関する誓約をしました。UNFCCCの公式児童・青年委員会であるYOUNGOは、世界中にいる4万人以上の若い気候リーダーの意見を反映したCOY16グローバル・ユース・ポジション・ステートメントを発表しました。

ユースに関する詳細(英語)

適応・ロス&ダメージ

世界のリーダーたちは、「地域主導の適応に関する原則」に70以上の賛同を得て、地域主導のアプローチを強化するイニシアチブやプログラムに4億5000万ドル以上を動員し、地域主導の適応へのシフトを約束しました。適応基金への動員は、英国からの2,000万ドルの拠出を含め、1回の動員としては最高額となり、これまでの最高額の2倍以上となる3億5,600万ドルに達しました。また、英国は適応策のための新たな資金として2億9,000万ポンドを発表し、そのうち2億7,400万ポンドは「 Climate Action for a Resilient Asia (CARA; 回復力のあるアジアのための気候行動)」プログラムに充てられます。

適応・ロス&ダメージに関する詳細(英語)

ジェンダー

ジェンダーデーでは、気候変動対策の最前線にジェンダーを据えようという新たな機運が世界中で高まっており、各国や非国家主体がコミットメントを表明しました。これらの発表は、2022年3月に開催される第66回女性の地位委員会(CSW66)に向けて、COP25で合意されたジェンダー行動計画の実施を推進するための国際的な機運を高めるものです。また、英国は、女性と少女が気候変動に対してより脆弱である不平等に対処し、気候変動に取り組むために1億6,500万ポンドを発表し、英国の開発金融機関であるCDCと共同でジェンダースマート気候金融に関するツールキットを発表しました。

ジェンダーに関する詳細(英語)

科学

科学とイノベーションの日に発表されたイニシアチブは、政府、学者、企業、市民社会の間の国際協力を強化し、パリ協定の目標を達成するために科学とイノベーションをすべての人に提供することを目的としています。 具体的には産業や都市におけるイノベーションと低炭素化を加速するための新たなコミットメント、気候変動の最前線にいる脆弱なコミュニティの回復力を高めるための新たなグローバル適応研究アライアンス、11月2日に世界の首脳たちが発表した「ブレイクスルー・アジェンダ」の進捗状況を追跡する独立した専門家、世界の科学研究コミュニティが気候リスク評価を毎年作成し、各国首脳がその危険性を十分に理解できるようにすること、などが挙げられます。

科学に関する詳細(英語)

都市

気候変動対策をすべての都市の意思決定の中心に据え、世界の気温上昇を1.5度までに抑えることを約束する、国連の「レース・トゥ・ゼロ」キャンペーンに、1049の都市と地方自治体が参加しました。英国政府は、発展途上国の都市や地域が排出量を削減し、持続的に成長することを支援するため、新たに Urban Climate Action programme (UCAP; 都市気候行動プログラム)を立ち上げました。英国はこのプログラムで2,750万ポンドの政府資金を投入し、ジャカルタ、クアラルンプール、ケソン市などを含む、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの最大30都市を支援します。世界の排出量の約40%を占める都市の建物を脱炭素化することは、気候変動対策のために非常に重要です。

都市に関する詳細(英語)

結果概要についての詳細(英語)は以下PDFよりお読みいただけます。

COP26: 交渉内容の説明

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