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英国のノーベル賞受賞者サー・ポール・ナースが語った「科学への信頼」とは?

英国王立協会会長、そしてノーベル賞受賞者であるサー・ポール・ナースは、知識の創出、イノベーション、社会への恩恵にとって、科学への信頼がいかに重要かを強調しました。

Nobel Prize winner Sir Paul Nurse gave talk on ‘Trust in Science’

科学者は、自身の思考にオープンかつ正直で、そして厳密でなければいけません。特に自分のアイデアに対して懐疑的でなければいけません。研究室から出て、一般の人々と触れ合ってみることです。もし、あなたがコミュニケーション能力に恵まれた科学者であるなら、ぜひテレビカメラの前に立っていただきたいのです。

サー・ポールは、10月8日(木)に、駐日英国大使館大使公邸で大和日英基金との共催により開催された大和一番レクチャーで講演し、なぜ科学にとって信頼が重要なのかを述べ、次のような疑問を投げかけました

自然界に関する知識を創出するプロセスを信頼に足るものにする科学とはどうあるべきでしょうか?一般市民からの科学への信頼はどのように築き上げていくことができるのでしょう?科学者が信頼できるかを判断するために、社会は科学者から何を求めているのでしょうか?科学への信頼を脅かすものとは何か、そしてそのために一体何ができるのでしょう?

好奇心と観察

サー・ポールは、科学がこれまで何を達成してきたのか、そして科学の主要な特性とその仕組みについて述べ、科学は信用できる再現可能な観察の基に築き上げられるもので、それが自然界の様々な振る舞いについての正確な描写を可能にすると述べました。そして、このようなエビデンス(証拠)が科学的試みの基盤になることを強調しました。

サー・ポールは、科学的アプローチを説明するために、英国の哲学者カール・ポパーの次の言葉を引用しました。

科学的知識は進化し続けるもの。そして多くの場合、研究初期においては暫定的であり、何度も繰り返し検証された後にやっと確実に近づくのだ。

懐疑的アプローチ

サー・ポールは英国王立協会の会長です。王立協会は世界最古の科学アカデミーで、1660年代から続くそのモットーは「nullius in verba(言葉によらず)」、(科学は事実に基づくもので)誰の言葉にも従わないという意味です。英国の哲学者フランシス・ベーコンの提唱した知識の探求における懐疑的アプローチは、科学者が記憶にとどめておくべきものです。

確実性から始めてしまうと最終的に疑念に終わってしまうが、疑うことから始めれば最後には確実性にたどり着くだろう。

未来社会のための科学

科学が築いてきた知識は、これまで人類社会と文化に数多くの発展をもたらしてきましたが、今後も科学が繁栄し人類社会に発展をもたらし続けるためには、私たちには何ができるのでしょうか?サー・ポールは、実用化に成功し科学が人類に恩恵をもたらした例として、昨年のLED技術のノーベル賞によって注目された、日本の産業界の最先端で利用されていたロボティックスが電子技術の革命をもたらした事例を挙げました。

サー・ポールは、科学による恩恵が継続されるためには、強固な科学教育制度と一般市民の科学への参画に支えられた優秀な科学者達の存在が必要であると強調しました。レクチャーの後のディスカッションでは、サー・ポールからこのような発言もありました。

英国の科学研究の卓越性の要因の一つは、もしかしたら英国の天気かもしれません。英国の天候は穏やかで、知識の追求の妨げになるような極端な天気がなく研究に集中できますから。

詳しい情報

サー・ポールの講演の全文は大和日英基金のウェブサイトでダウンロードできます(原文のみ)。

英国の優れた研究・イノベーションについては、Innovation is Great(英国と創る未来)のウェブサイトをご覧ください。

大和一番レクチャーは、大和日英基金のご支援のもと開催されました。大和日英基金は、日英間の交流促進のため、奨励助成をおこなっています。

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